《MUMEI》

「象野郎…。」

記憶に新しい毒舌をかましながらハルの期待に応えるべく、少しでも多く刀身に魔力を溜める。少しも外界に漏らす事なく魔力を蓄積するのはかなり精神力を消費するが、こればっかりは仕方が無い。

「スキル発動。コード:ラビルキック。」

先程と同じタイミングでスキル名を唱え、空を思い切り蹴り飛ばす。

するとやはり。

流石プログラムというか、先程と同じタイミングで魔方陣が描かれた。

が、同じ方法で行った意味はここにある。

「スキル発動。コード:トルネードラッシュ。」

魔方陣が俺を包む前に、俺は腕を振り上げ、真後ろに突く様にスキルを発動する。それにより、刀身の矛先から見事な竜巻が荒ぶって放たれた。全く踏ん張っていなかった俺は大きく前に飛ばされた。

「ぐぎゅるお…!」

魔物が雄叫びを始めようとしている。敵までの距離は二メートルも無い。背後から聞こえる魔方陣が発動した音はフィールド全体に響き渡っているだろう。

中に居ると分からない事も、外に居ればこうも容易く想像出来る。

息を吐く隙も与えない。

「スキル発動。コード:アッシャー。」

両手上段の構えから、刀身が朽葉色の光に包まれると同時に、精一杯振り下ろす。二メートルもあった距離が、象に刀身が食い込む毎に縮んでいき、一メートルも無くなった。

そのまま重力に任せて下に落ちて行く。

「うおぉぉおお…ぉらあ!」

最後に勢い良く振り抜く。

が、象は決して真っ二つに割れてはいなかった。屈強な事この上無い。しかも、粒子化もしないではないか。まさかこいつは…。

俺の渾身の一撃を喰らって、まだヒットポイントがゼロまで達していないのか。

俺にはもう魔力は残って無い。そんな思いも虚しく、象には明らかに溜まっていく魔力を感じた。

「ここまで来たのに…くっそ…。」

俯き、諦めかけた、その時。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫