《MUMEI》 桜の花弁を髪に乗せてる男性のお話。何時も昼休み、皆とご飯食べてポカポカ春の陽射しに誘われて、二階にある教室の窓枠に凭れてた。 『ふにゃ〜ぁぁ』 猫の如く欠伸しながら、階下を歩く人を眺める。 …あ、坂下先生だ。 真下に見えるのは、お堅い生活指導の、一見カタギに見えない強面の坂下先生。背筋をシャンと伸ばして、シャキシャキ真っ直ぐ歩いていた。 …歩き方にも、性格って出るんだぁ。なんて見てたら…先生の頭の天辺に散らばる薄桃色の花びら。 『ぷぷっ…』 …なんか、かっわいいの。強面の先生に不似合いな可憐な桜の花びら。何処でくっ付けて来たんだろ?俺は思わず、先生に声を掛けていた。 『坂下セーンセ!』 「…ぉ、誰だ?っと、2Bの真壁か?」 『うん、当ったりぃぃ、先生、凄いね。俺の名前知ってんだぁ』 「…当たり前だ。生活指導教諭が、生徒の名前を知らないでどうする?」 二階の俺を仰ぎ見ながら仏頂面で会話する。 …んーもう少しにこやかな顔出来ないもんかにゃぁ。頭に可愛いモン、くっ付けてんのになぁ。 本人、知らないんだろうな。桜の花びらを、くっ付けてるの。 あ、良いこと思い付いたぁ! 『ね、先生。俺もね、先生の事解るよ!』 「ん?何をだ?」 『先生、お昼は体育館の横の庭でご飯食べたでしょ?』 すると、先生はちょっとビックリした顔をした。 「…なんで解った?」 …あ、驚いてる。ププッ!だって桜はあそこにしか植わってないもんね。 『んーだって、俺は先生のファン1号だもん。』 「は?ファン?お前何言って…」 あ、先生の仏頂面が崩れて焦ってる…ってあれれ?みるみる赤い顔になって照れてる?…あ、なんか可〜愛いかも…。普段の強面キャラとのギャップが堪らん。マジでファン1号になっちゃおっかなぁ。 『先生、ちょっとそこで待ってて』 「あ?なんだ?」 バタバタと階段をかけ降りて、先生の元へ一目散。息を切らして駆け付けた。 『ハァハァ…おっ待たせぇ、ね、先生。お辞儀して?ね〜早く早くぅぅ』 「お前…良く解らんが、ちょっと落ち着きが足りない…って、何だ?」 文句を言いながらも、俺の言いなりになる先生に苦笑いしながら、目の前にある、桜の花びらを指で摘まみ取り払う。 掌に花びらを乗せ、先生の前にズイッと差し出す。 『はい、先生。ごめんね、種明かし。これが付いてたから解ったんだ。』 「あ?え、桜の花びら?あぁ、そうか。成る程なぁ…だから、か。…そうだよなぁ、俺にファンなんて、なぁ」 なんか寂しげに聞こえるのは、俺の気のせい? 『あ、先生。でもね、ファン1号ってのは本当だよ!』 …そう、今さっきファンになったから…よろしくね、先生。 にこりと笑えば、再び耳まで赤くなる坂下先生にやっぱり可愛いなぁ、と密かに思うのでした。 おしまい 駄文失礼しました。 読んでいただきありがとうございました。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |