《MUMEI》
悪役がヒーローを好きでも良いじゃないか。
「ルン、ルルン、ルルンル、ルン!」

俺様は、ご機嫌で身仕度をする。

…フフッ、もうすぐ逢える。この前、逢ってから何日過ぎたのか、思えば顔がにやける。

いや、いかん!俺様は悪の首領だ。キリリとせねば、部下に示しがつかん!


…あ、今日の戦闘服は、黒い水玉にしようかな?アイツ、水玉好きかなぁ…いややっぱパンサー柄が俺様の金髪に映えるからパンサー、いや待て待て…うんゼブラ柄に決めた。


ミラーに全身を写して、くるり回ってお出掛けチェーック!うん、完璧だぜ!俺様に惚れ惚れしろ、聖霊剣士、ゴーフェアリーレッド!


最後の仕上げに、爽やかな柑橘類のトワレを振り掛けた。




……………………………


『出たな!妖獣大魔王』

俺様が、街中で暴れていると赤いマントを翻し、アイツが、他の奴らと共に現れた。


…イャン、指差しポーズも様になってる。

「カッ…」

いかん、思わずカッコイイって言いそうになった。

「ゴホン…また邪魔しに来たのか?フェアリーレッドよ。」


『悪の現れる所に、俺達は現れる。正義の裁きを受けろ!妖獣大魔王よ』


…ちょ、何なに?公衆の面前でストーカー告白?マジ鼻血吹くから止めて。あとね、俺様、受じゃないから…レッド、君が俺様を受けて…ヤバッ、妄想したら鼻から血垂れた。

…見かねた部下にティッシュで拭かれた。すまん、部下Aよ、お前後で褒美をやるよ!


そんなやり取りをしていたら、いつの間にかレッド達に回りを取り囲まれていた。

『天地空山海の聖霊よ、我等にフェアリーの力を与え共に悪を倒さん!』


…あ、ヤバイ。コイツ等いきなり、最終奥義を繰り出すつもりだ。若いモンはせっかちでいかんな。まったく、もう少しレッドとの会瀬を楽しみたいのに…。


『天、アマかける白鷺の聖霊…フェアリーホワイト!』

『地、大地を統べる玄武の聖霊…フェアリーグリーン!』


…ま、最終奥義繰り出すまでの、一人一人の詠唱が時間掛かるから、大丈夫なんだけどね。

俺様、強いし…ね!


「ザバード!」

魔法呪文を唱え、瞬時にレッドの前へ移動する。


『くっ、大魔王』

「スッ…」

…マズイ、近すぎた。
思わず、好きと言いそうになった。唇が触れそうな距離、目眩と動悸でキュン死しそう。

でも、失敗は成功の元。
えーい、この際だ。抱き付いてしまえ!ぎゅうぎゅうと、レッドを抱き締めた。


『あ、このヤロウ!レッドを離せ!』

隣に居た、フェアリーブルーから蹴りを入れられた。


…地味に痛いんですけど。何なに?ヤキモチなの?ブルーはレッドが好きなの?駄目、レッドは渡さないよ!

ブルーに軽く睨みを効かせ、レッドを抱く腕に力を込める。すると、レッドが顔を歪めた。


『くっ、大魔王。お前…臭っ…酸っぱい臭いがする。俺、酸っぱいの苦手なんだよ、くっさ…』


「…え?臭い?えぇ、俺様臭いの?え?あ…もしかして」


原因は、柑橘類のトワレ。爽やかじゃなかったの?酸味効きすぎ?てかレッド、酸っぱいの駄目なの?

好きな奴に臭いって言われる俺様って……。


ガックリと来て、力が抜けた。


『今だ!最終奥義、フェアリーブリザードアターック!』


…あ、傷心の俺様になんて酷い仕打ち。でもレッド、精悍な横顔がカッコイイィィ……………。


最終奥義に吹き飛ばされながら、レッドの顔を網膜に焼き付けて、今夜のオカズにしようと思う、健気な俺様でした。

レッド大好きだぁ!!

『悪役が正義の味方を好きで悪いか?』




おしまい


……………………………

やっちまった感が…。
ごめんなさいm(__)m

寛大な気持ちで読んで下されば幸いです。ありがとうございました。

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