《MUMEI》
エンディング スタート
「…ケル!…カケル!」

バチン!

激しい衝撃が俺の両頬を攻めた。

「ったぁ…!」

別に痛みは無いのだが、ついつい口から出てしまう。

「私を怒らせに誘ったのかしら、カケル?」

ハッとして周りを見渡す。先程までいた二人組の少女はもう何処にも見当たらない。首をふる俺にハルは冷やかな声で、低く小さく声を出した。

「今さっき帰りました何度も言うようだけど私を怒らせに来たの?」

隙間無く言葉を連ねる。笑顔だが、心無しか…いや、確実に額に怒りマークが浮かんでいる。ハルを包むオーラがどす黒い気がするのは怯えのせいだろうか。

「いや、違うんだ!ちょっとハルの事考えてて…。」

「私?」

ハルは自分の顔を指差し、キョトンと顔を傾ける。コロコロと変化する表情は、見ていて飽きない。が、今はそんな事を言っている場合ではない。

「そう、ハ、ハルの事!出会った日の事だよ。懐かしいなぁって…!」

ハルは試すように、お互いの顔を接近させ、じとーっとたっぷり目を睨む。

「本当?」

迷わず大きく首を縦に二度振る。

「本当、本当…!」

引き吊った笑顔で答えると、鼻が付く程に顔が近かったハルは、くるりと片足を軸に百八十度回転をし、俺に背を向けた。

「じゃあ許す。」

顔だけを振り向かせてはにかんだハルは、まるで何処かの有名な女優のようだ。つまり、とても美しい。

ハルは時々こういう顔を見せる。まるで、俺に全てを預けてくれているような。安心しきったような、淡く優しい笑顔は、いくら一年冒険を共にしても、未だに慣れる事はない。

そんなハルが俺は大好きだ。

「どうしたの?カケル。顔が真っ赤だよ。」

ハルは心配そうに、今度は体ごと振り向いた。

「思い出してたんだ。ハルと出会った日の事。あの日、俺はハルと会って変化した事を本当に運命のように感じたんだ。」

ハルの目を見ながら、思った事が口から出てくる。そうだ、俺はあの日、可笑しな事を思っていた。

思わずクスッと笑ってしまう。

「何よ、変なカケル。」

そんな変な俺を見ているのは、きっとハルだけだ。

そう言うのはやめて、代わりに微笑みかけた。

「あの日、俺は`ハルと出会って起きた変化が良いものかは、これから判断していこう´って思ったんだ。でも、そんなの`良い´で当たり前なんだ。」

「出会ったのが、`ハル´と`カケル´だからでしょう?」

俺が言葉を続けようとしたら、ハルが俺と同じ気持ちを言った。

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