《MUMEI》

「だって。カケルの好きな人気になるんだもん。ゲームの中で出会ったって言うし。」

「う、うるさいな。」

その理由とは、俺が口を滑らせた事だ。

あれは、ほんの二日前。二人でクエスト攻略をした後の帰り道。



「…と…ところで、カ…ケルって、好きな人とか、いたりするの?」

「ぶっ!」

「へ、変な意味じゃなくて、き、気になったっていうか。

「いや…いるけど…。」

「え!いるの!?」



それ以来日に一度は聞いてくる。全く、人の気も知らないで。

「はい、これ。」

言い争いに一段落が着いた丁度その辺りでカナが注文していた物を持ってきた。

「お、さんきゅ。」

受け取ったのは、柄から鞘まで漆黒で、唯一の色見は柄の先から鞘の先までの真紅の直線という、九割方が漆黒の大剣。

形状は、かの俺の愛剣《怒号灰迅》と全く変化は無い。それもその筈。

今の俺の愛剣《聖紫光 ドゥーカス》は、《怒号灰迅》に改良・加工を重ねて創ったのだ。

あの日、ハルにカナの所へ連れて行って貰って良かったと本当に思う。この《聖紫光 ドゥーカス》は、とても凄い剣だ。

ミリオンヘイムオンライン内で、唯一無二という、超絶と言って良い程に優れている。

久々…でも無いが、二日ぶりの愛剣との対面。一度両手で剣の重量感を全身で噛み締め、柄に右手を添える。そのまま掴み、引き抜く。日光を刀身に当て、反射で目に映った光沢に満足し、鞘に収める。

「ステータスが大幅アップしてると思うよ。名称は《聖紫光 ドゥーカス》のまんまだけどね。」


「おう。本当だ。ところであと何回の調合で、こいつはレベルマックスになるんだ?」


剣のステータスを指を鳴らして出たメニューの装備欄から確認する。


「あと二回だった筈よ。最後の調合材料は大変だった気がするなあ。」

「だろうなぁ。」

剣を見ながら嘆息する。


カナは基本ポジティブシンキングなので、多少無理目なクエストでも、「カケルなら出来る!」と元気付けてくれる。そのカナが、大変と言っているので、余程大変なのだろう。


「ま、アリガトな。また材料が揃ったら店に顔出すよ。」

「それ以外でも来て良いって言ってるのに。」

「いやー…ははは。」

「わ、私、真面目に言ってるんだからね!」

カナからいつものふざけた感じが伝わって来ない。


……?


「カケル!」

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