《MUMEI》

「こんど一緒にこの家にあきらくんを連れてきなさい、みんなで食事でもしようねぇ」
「あぁ、そうだなぁ…」

 荷造りをしたバッグを俺に渡してくると「くるみを宜しくね」と言って背中をポンポンと叩いてきた。

 俺の車のトランクに荷物を入れていると、マックスは何も言わずに後部座席にあったチャイルドシートを撫でていた。

 助手席に座って気落ちしているのかと思い、ちらっとマックスの方を見たら「かなたの恋人の”超イケメン侍”くんも一度来てくれないか

なぁ」と、意外と元気にそんな話をしてきた。

「克哉は会った事があるんだろ?私はまだかなたの送ってくれた写真でしか見てないんだよ〜オリエンタルな子だよねぇ〜♪」
「……かなたにそう言ってみたらどうだ」

 車を運転している俺に送られてきたかなたの恋人の写真を見せながら、年甲斐もなく嬉しそうにはしゃいでいたので、こっちとしてはホッ

と安心した。

「克哉…」
「何だ」

 急にマックスが普段見た事が無いような真面目な顔になり、俺に向かって静かに語りかけてきた。

「責任っていうのはな、取るものじゃなくて…取らされるものなんだぞ…」

 マックスはさくらを追いかけて日本に来て、さくらの家に居候をしていてなんだかんだで俺が出来たと言っていた。

 そこでマックスはずっとさくらの両親に会いたいと言っていたのだが、さくらが面倒だと言って会わせてくれなかったらしい。

 やっと会う事になったのだがさくらには何人か兄が居て、年の離れたその人達はその当時外国人で若かったマックスを訝しげに思い、交際

を反対していたんだそうだ。

 しかしもうすでに出来ていた赤ん坊の俺を見て、お兄さん達が慌てて交際を認めてくれたんだそうな。

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