《MUMEI》

「責任を取るなんて言ってるようじゃ、まだまだ子供だよ…俺は取らされたんだぞ〜」
「…嫌だったのか」
「えっ!全然〜嫌じゃ無かったよ!さくらちゃんも忙しくてね、なかなかご両親に会えなかったんだ、でもお兄さん達はとても協力的だった

よ」

 両親に会わせたくなかったという事は、さくらはマックスと結婚したくなかったのだろうか…?

 当時から非常にパワフルな女性でもあったさくらは、こんな子供みたいなのと一緒に居るのが面倒だったのかもしれない。

 しかし、面倒くさがりのさくらと世話好きのマックスのバランスが丁度良かったのか、ずっとケンカもせずに長くやってこれたのかもしれ

ない。


「あ、克哉さん…シーっ」
「ん…あぁ…」

 家に帰ると、ソファーではくるみが気持ちよさそうに眠っていた。

 どうやら俺達が居ない間にさくらとアキラは仲良くなったようで、二人でくるみの事を色々と話していた。

 くるみが私達の子供になる話が、現実味を帯びてきたらしい。

 そして、あきらともし結婚するとして知り合いの弁護士に話を聞いてもらったのだが、少々ややこしいらしい。

 相手が同じドイツや欧州の人間ならいいのだが、日本となると面倒だというのだ。

 ドイツの方の手続きは簡単に行くのだが、日本側の書類というのが厄介だそうで、その申請したとしても、許可が下りる可能性は遥かに低

いのだそうだ。

 そうなると、アキラの国籍をどうにかする方が先になるかもしれない…。

 …どうしても、彼と一緒に居たい。

 アキラの居ない生活、アキラ以上のパートナーなんて、考えられない。

 そうなると彼はこの面倒な事態に耐えてくれるだろうか…。

「僕の子供に…なる?くるみちゃん」
「うん、ずっと一緒にいるよぉ〜」

 寝ているくるみの髪の毛を、もうまるで母親のように撫でながら嬉しそうにしているのを見て、この親子を離れさせてはいけないと、心の

中でそう強く思った。

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