《MUMEI》

そうやって、求めてくれればいい
求めてくれさえすれば返してやれるのだから
「……僕の傍に、居て下さい。ずっとなんて、言わないから」
どれ程教えてやろうとも求め方は不器用で
どうすれば互いに素直に求め合えるのだろうと
感じてしまうもどかしさに豊田は相手の唇を塞いでいた
「本当に、いいのか?」
「……?」
唇を話し、耳元で呟いてやれば
相手は何のことかが分からず豊田の方を見やるばかりだ
「……ずっとじゃなくても、本当にいいのかって聞いてるんだが?」
言いたいことは別にある筈だ、と言葉で誘導してやる
望んで、求めて、欲して
こうすればいいのだと手本を見せてやるかの様に
「……豊田さ……」
「何?」
「あの……、僕……」
たどたどしく言葉を発しながら、相手は豊田へと手を伸ばす
欲して、求めて、そして触れる
最初は豊田の真似でしかなかったそれが段々としての意思そのものに変わっていった
「好きになって、ごめんなさい。でも、僕は、あなたが――」
欲しい、とは最後までその言葉は形にはならなかった
豊田の唇がその声を喰うように相手の唇を塞いだからだ
理性も何もかもがその瞬間に失せ
唯、本能にのみ任せて相手を掻き抱く
恐らくはこういう事に不慣れだろうその身体を
だが気遣ってやる余裕など今の豊田にはなかった
「……謝らんでいい」
「豊田さ……」
「俺の気持ちは多分、お前と同じだ」
「……同、じ……?」
同じ、否少しばかり違うかもと豊田はわずかに肩を揺らす
向けられる(好き)に対して同等の気持ちを返してやれる程にはまだ至っていない
それは恐らく、これから現れるものなのだろうと
「……それでも、いい。いいから!」
今は、不確かなそれでも構わない
ほんの僅かでもその気持ちがあるならそれだけで充分だと
相手は目を見張るほど綺麗な笑みを浮かべて見せる
「……その面は、反則だろ」
まだ幼さを残す筈のそれがひどく扇情的に見え
豊田の身体の奥が派手に脈打ち、疼く
自分も所詮、欲にまみれた男かと肩を揺らし
そのすべてを相手へと与えてやっていた
「……ぁ」
痛みと快感が入り混じった表情
拒む言葉もなく、豊田は相手の意識が飛んでしまうまで
己が欲を与え続けてしまったのだった……

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