《MUMEI》
一人部屋
「何、それ」
乙矢は俺の荷物を見た。


「東屋と代わってもらおうかと。」
駄目なんだ。
もう七生といるの限界。


「話し合いな。」
乙矢は落ち着いている。
読んでいた分厚い本は半分以上も減っていて彼の利発さが伝わった。




乙矢のその静寂が俺の心を平たくする。



「ベッド貸して……。」
思考は停止させようとすればするほど活発に働く。
思い出したくもない記憶の渦に食い荒らされてしまう。


ベッドの隅で体を丸める。食われた体の隙間を埋めるように。

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