《MUMEI》

数分後、日向たちはESO日本支部からさほど離れていないジャンクフード店にいた。
「人が、多いです……」
光は顔を俯かせながら呟いた。
「人が多い場所は嫌いなのか?」
「はい……」
それを聞いて日向は店を出ることに決めた。

「仕方ないから立ち話でいいか?」
「……大丈夫です」
顔色が幾分か良くなっている。
本当に人ごみが苦手なのだろう。
「まずは俺たちの世界について話すことにするか」
「……宗教ですか?」
「違う
あと、話の腰を折るな
……俺たちは今<ここ>にいる
つまり、<この世界>に生きている住人だ」
「……それでどうしたんですか?」
光は怪訝そうに首を傾げた。
「<この世界>の住民は、しかし俺たちだけじゃない
<世界の裏>には、俺たち……<この世界>の住人に危害を与えようとしている奴らがいる」
そこまで聞いて少し理解できたのか、光は小さく頷いた。
「お前を襲った奴らが正しくそうだ
俺は担当しなかったからよく知らないが、中級魔王くらいは来てたらしいな」
「よく……わからないです」
「仕事の中で分かるようになるさ
<こっち>に出て来たあいつ等を倒すのが俺たちの役目だ」
「なるほど……あっ」
「どうした?」
「いえ……
さっきから<こっち>とか<世界の裏>とかって言ってますけど
……それはどういう意味ですか?」
「ああ……言い忘れたか」
バツが悪そうに頭を掻きながら日向はこう告げた。
「この世界には文字の通り裏表がある
今いる世界<明界>と……魔王たちが支配する世界<暗界>がな」

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