《MUMEI》

市街地を二人で平行に駆けて行く。

「壁上まで競争な。負けた方はオムライス!」

「あっ。カケルズルい!屋根の上とか…猫じゃあるまいし!」


俺の言動を否定しながらハルも市街の列なる屋根に軽く乗り上げる。


「おっさき〜。」

そう言い、ハルの眼前に突如として飛躍し、接近した。

「ひゃ…!」

そこでわざとハルの足下付近で強く踏み込み、注意を反らし、壁上目指してまさにひとっ飛び。

ハルは呆気に取られて俺の背中を見ているばかりだ。

その頃、壁上に足と手をほぼ同時に着き、ハルを見た。すると、そこらに居た人々が揃って俺を見て、ハルと同じ顔をしていた。

しかしそんな状況にも慣れてきたので、気にする素振りも見せずにスルー。

「オムライスなー!」

「………まったく。割り勘ならいいけどっ!」

そう言って、先程の俺と同じ様に壁上…俺目掛けて跳んできた。すぐにハルの姿が鮮明になり、手も付かず、俺の真横に華麗に着地した。

「私も半分食べるわよ。」

「ま、仕方無いか。いきなりだったしな。」

「もう。カケルってばオムライスばっかり。」

「良いだろ別に。そんな事よりも早く行こうぜ。ここから近いんだしさ。」

そう。今二人で向かっているベルゼフ城は、このオリガルトから北西に約十キロメートル位走った所の樹海のエンシェントダンジョンなのだ。


エンシェントダンジョンとは、一定のレベル…そのダンジョン毎の必要最低限のレベルを越えると行けるようになる場所だ。エンシェントダンジョンが正式名称だが、一般では隠れダンジョンと呼ばれる事が多い。

このベルゼフ城も隠れダンジョンのひとつで、レベル七十を越えないと入れない(だった気がする)。

よって、俺とハルは容易に入れる事となる。

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