《MUMEI》

「二郎は普通が好きだろう?今までの生活がいいんだろう?」
七生が正座した膝の上で拳を握る。
そしてまた口を開いた。

「俺はもう誰か他の人を見たりなんか出来ないから、二郎が誰か好きな人が出来ればいいかと思った。

一人想い続けてもその相手が幸せなら報われるから。



実際どうだ、全然幸せそうじゃない。むしろ前より弱っている。

かえでのときみたいに利用されたなんてことは考えたくなくて、お前に相応しい富岡を見つけた。
でもそれも失敗。





それどころか二郎を見れば見るほど熱くなる。触りたくなる。狂おしい程だよ。

冷めない熱は手に移り、俺の体は求めてる。」
子供が玩具をねだるように七生は体を震わせた。

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