《MUMEI》
幸せだった
「先輩………あのね」
「?」
「私も…進路、遠くに行くんだ…」
「…どこまで?」
「京都…」
「………京都か。俺より遠いな」

大学生になる先輩と、暫くばいばいする。
見送りで新幹線のホームにいる。
あと、1分だけ。

「埼玉かぁ。東北からばいばいですね」
「遊びにおいでよ。夏休みとか」
「……はい」
「………来ちゃった…」

ホームに入ってくる新幹線。
また、暫くばいばいなんだなぁ。

「………じゃぁ…ばいばい」
「………はい…また、いづれいつか」
「………元気でね」
「………先輩も。お元気で」

ゆっくりと、新幹線が動き始める。
………嫌だ。
行って欲しくない………!

「………っ先輩!!」

聞こえないのに、叫んだ。



何となく………悟っていた………から。

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