《MUMEI》

〜梓〜


「アチッ」

左手が異常に熱くなっていた。
ビンを持っていたため、そのビンまでもが熱くなってしまう。

「ど、どうすれば…」



ボテッ




…ん?今何か落ちなかったかい?




ボテボテッ




まて。待て待て待て――――――!!!!



ビンが赤く光って、ドロドロと溶け、下のアスファルトにボテボテと落ちている。

唖然として見ている周りの人、どうすることもできず見ている自分。


結局、全部溶けて落ちてしまった。


「どうしたものか…」


今のままじゃ、左手に触ることができない。左手で触ることもできない。
…温度が下がったのかどうかすらも確認できない…;;



…カランカラン



足元に、とても短い鉄パイプが転がってきた。

…鉄パイプそんなに短かったっけ?


拾ってみる。

…溶けなかった。

温度、下がったのかな?



「よかったな。…温度下がって」


向こうにいたのは、手のひらから銀色の雫が滴る、背中ぐらいまで伸びたロン毛の青年。
ロン毛、というとチャラいイメージが私の中にあるのだが、
逆に、この人、怖い…。
たとえるならば、名○偵コ○ンの、黒ずくめの組織のジ○のニヤニヤしないverみたいな。
低い声は、年上を感じさせる。おいおい、眼付悪いな。怖いよ。
でも、根は…やさしい…のか?


青年は、しばらくこっちを見た後、そのまま向こうへ行ってしまう。

「怖かったー…」


彼のくれた短すぎる鉄パイプを片手に、恭介の方へ戻った。

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