《MUMEI》
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大抵のライトノベルで今の状況をテーマとした作品の主人公達は皆、何らかの非凡な才能を持ち合わせているものだ。
例えば、その人物の辿る歴史を熟知していたり、現代軍事に精通して飛ばされた時代の用兵に合わせた戦術を考え付く応用力を持っていたり、何ならただ単純に腕ぷしが強いなどでも良い。
とにかく、そう言った非凡な才能が彼等を助け、また接触した偉人を導き、活躍をさせる事が出来るのだ。
では、自分はどうか?
母親の仕事の関係で一時期、フランスに居た事があり、言葉については日常会話程度ならまだ覚えていた為、今のところは問題無い。
日本に帰国した後は偏差値が高くも無く、低くも無い平凡な県立高校に通い、成績は下の上程度、世界史はもちろん日本史でさえ教科書で習った範囲の事しか知らない。
もちろん、ジャンヌ=ダルクの事は知っているが一般に知られている大雑把な歴史の知識としてだけしか知らない。
また、殴り合いの喧嘩などした事も無いし、ずっと帰宅部であった事もあり体力には自信が無い。
つまり、自分には雀の涙にも満たない戦闘力しか無い。
こんな荒れた時代で一人でサバイバルをして元の時代の日本へと戻るなど不可能だろう。
かと言ってジャンヌに付いて行く選択肢が有っても彼女は必ず、戦場へ行く事になる。
そうなれば、戦場で一瞬で斬り殺される、確実に。
「・・・俺、詰んでるな。」
「何をブツブツ言ってるんだ?私は名乗った、君も名乗るのが礼儀だろう?さあ、名乗りたまえ」
考える事に没頭していたのでジャンヌが顔を近づけているのに気づいていた。
「ウァッ!ちょっ、ちょっと顔が近いって!」
「何だ?何を、そんなに慌てているんだ?」
不思議そうに見つめるアイスブルーの大きな瞳にどキリッと心臓が高鳴り、それを誤魔化す為に咳払いをしてジャンヌの問いに答える。
「俺は三上 祐介。こちら風に言うとユウスケ ミカミだ。あと、さっきは助けてくれてありがとう。」
「何、構わないさ。ほら、ユウスケ。多少、刃こぼれしているが丸腰よりは良いだろう。」
そう言うとジャンヌは近くにあった剣を拾い差し出した。

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