《MUMEI》 チーム名:WATERWHITE 命名:上原梓 「…メンバーどうすんだよ」 「強い人集める?」 「…うん」 「じゃあ決まり」 「何が?」 「いいから!」 状況が理解不能。梓に手をひかれて雪が積もった地面がギシギシと音を立てる。 向かい風が顔にあたって寒い。っていうか辛い。 アプリを開いたままだった俺は、端末をのぞいた。 …うん? …ちょっと待って梓さん。 俺まだ死にたくない―――――!!!! 風が強くなる。 雪が顔にあたる。 まるで顔面狙われ続けた雪合戦に参加しているようだ。 …雪の色、雪じゃない…。 …ここからが本当の地獄の始まりだ。 想像できますよね。そろそろ。 ――――――――――ここ、ゲート付近なんだよ。 そう。ゲート付近ということは、円形に人が殺されている不可思議ワールド。 今でも、その中心にはしっかりとアイコンが残っている。 「あ…梓、何するつもりなんだよ」 「あの中心にいる人物を、チームにいれるんだよ!!!」 …ハイ? …今なんて? …駄目だ…。もう諦めよう。 俺はどっち道死ぬんだよ。 梓に手をひかれて走っていく。 景色は降りかかる白と積もって染められた紅。 ふと、血まみれの男がすれ違う。 逃げてきたのだろうか。 その男がこちらを見ると、 「今日はゲートに行くな!死ぬぞ!」 「大丈夫―――!」 全然大丈夫じゃね―――よ!!! お前死にたいのか!! 勇気あるやつだって思ってたけど、勇気ありすぎてあきれるわ!! その溢れる勇気、俺に分けてくれ―――!! 男はやめろ、行くな―――!と叫んでいるけど、こいつの耳は左から右に流しまくっている。 端末を見る。そろそろ中心に着くのではないか。 もう地面はビチャビチャの血液の洪水。 梓がいなければ今にも発狂してしまいそうだ。 「…恭介?」 梓が振り向く。 「な、なんだよっ」 梓が掴んでいた腕を見た後、足を見る。 「恭介、震えてる」 「うっうるせぇ…よ…」 こんな大量の血液と、鼻にくる鉄分のにおいは、トラウマになりそうだ。 …にしても、なんで梓は怖がらない? 可笑しい。こいつ狂ってやがる…! 「大丈夫?恭介…」 おまえが大丈夫かっつうの…! …吹雪になってきた。 強い風、顔にあたる痛くて冷たいもの。 周りが真っ白で見えない。見えるのは真顔の梓と、地面に広がる深紅の液体。 「なぁ…お前…怖くn」 梓が俺に飛びついて押し倒した。 「な、なにすんだよ…!!」 おかげでコートが真っ赤に… 「…きた」 ゴクリ、とつばを飲み込む。 汗がじわじわこみあげてくる。 寒いのに。寒いのに! 焦りで頭が真っ白になる、目が回る、吐き気がする!! なんで、お前は―――― そんなに冷静なの? 怖くないの?恐ろしくないの?怯えないの? 「…くる」 真っ白い向こう側から、のびてくる銀色。 梓がそれをギリギリでよけた。 「…予想以上に強い。恭介は透明になって逃げて。私が戦う」 「なにいってんだ…お前!」 「いいから!」 俺は発狂しそうになりながら血の道をビシャビシャと音を出しながら逃げた、逃げた、逃げた。 吹雪の強風に靡くみつあみと、堂々とした後ろ姿が遠くなっていく。 一目散に逃げる。 怖い怖い怖い怖い怖い怖い―――――――――――!!! 気づいたら俺は、あの高台にいた。 何もかもが、リセットされた気分だった。 濡れた衣服が、凍っている。 …赤い染みを残して。 あぁ、俺はまた、大切なものを見失うんだ―――― 瞳を閉じて、あふれ出たその雫は、頬で凍りついた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |