《MUMEI》 飛「これでいい」 吹雪の中、真っ白になる世界と向き合っている。 最初から、仲間に入れるつもりはない。 なんでここに来たか?倒さないと邪魔になるだろうから。 なんで恭介を連れてきたかって?反応が気になったから。 わかってるよ。私が最低なのは。 …小さいころから、ね。 さて―――鉄を使おうと思ったけど、さっき溶かしてそのままだったな。 でも、いい。 私の武器は、それだけじゃない。 ―――ここは、私のフィールドだ。 右手を開く。天に向かって手を伸ばす。 …温度を下げろ。 右手には、しっかりと槍が握られていた。 槍をくるくると高速で回す。 ヒュンヒュンヒュンと心地よい音が流れる。 掌で槍を回しながら円の中央へ堂々と歩いていく。 …見えてきた。奴が。 今にもラスボスのBGMが流れて来そうな、その威圧感、圧迫感、緊張感。 「やっと、強そうなのが来た」 奴は不気味に嗤う。 チビで、私と同じ一つみつあみ、ダボダボのカンフー服。腰には黒い帯が巻かれていた。 長い袖からは、手の代わりに鎖が出ている。 …いかにも中国的な。 …今時こんなやついるんだな。しかも、鎖。チュウニ臭い。セリフも。 だけど、この赤く染まったフィールドが、奴の強さを証明する。 回した氷槍を勢いよく投げる。 =ひょいとよける。 掌を相手に向け、空気の温度を一気に下げる。 その場でできた鋭い氷の軍団は、一気にカンフー野郎に飛んでいく。 =当然のように鎖ではじいた。 「…へぇ。やるじゃんアンタ」 奴が口を開く。…声の低さからして、男だな。性別わかんなかったよ、この女男! 「そりゃどーも。」 まず適当にあしらっとく。 「アンタ、名前は?」 …なぜ? 「…上原梓。キミは」 「飛(フェイ)」 …中国人だ。 「じゃぁ 始めますか」 掌をあいつに向けて、氷を生み出し、向こうに飛ばす。 その時。 白い世界に双つの紅い閃光。 奴を見た。 …そこにはバケモノがいた。 そこの床にたまっている液体の色で鈍く光る、妖しい瞳。 こいつ、人体実験でもしたのか。 普通の人間は、こんな色の眼をするはずがない。 …まさか、カラコン? そんなはずはない。 「ここは俺のフィールドなんだぜ」 こいつも、氷を使うのか!? なら、溶かしてやる…! 「お前、強そうだから簡単には殺してやらない。…今から俺のオモチャになるんだよ」 「何言ってんの、キミ」 苛立ちから、力がこみ上げてくる。 床から、赤い氷柱が何本も出せるくらいに。 「余裕ぶっこいてると…」 床の液体が揺らめく。 「――――痛い目にあうぜ」 ブシャッ 「ぐッ」 赤い液体が、私の脚を貫き、すぐに液体に戻る。 私の脚からも、血が吹き出る。 こいつ…氷の能力者じゃない。 何者!? 考え事をしてるうちに、脚に3本もの血の柱が私を貫いた。 …立ってられない! 尻もちをつく。 「ハハハハハハハハ!さっきの余裕はどこに行ったんだよ!まだまだ遊んでやるから死ぬんじゃねーぞ!」 こいつ、鬼畜だ! 可笑しい。人を痛めつけるのに何の躊躇いも無い。むしろ、楽しんでいる。 さっきまでの真顔はけし飛び、焦りで汗が止まらない。 どうするべきか…どうするべきか!! 前へ |次へ |
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