《MUMEI》

ヨモツの演説は続く。
「太陽神はジンム様の肉体を借りて告げられた!
この列島の東で最も強き力を持つ神・・
・・、すなわちアラハバキ族が宿すオオクニヌシを服属せよ、と!
それにより、混沌としたこの列島が平定されるであろう、と!
アラハバキよ、
答えは如何−いか−に?!」
ヨモツのマグマでも噴き出しそうなオレンジに輝く瞳は、アラハバキ族の先陣を越えて、その奥の一点に向け据えられてい た。
まるでその者だけに、直接話しかけるかのごとく。
それにしてもいくら最初の混乱が治まったとは言え、アラハバキ族の先陣隊の後ろに控える詠唱隊は、相変わらず呪文を発し続け、その影響からか大気が不穏にゴロゴロと鳴り響く中、ヨモツの声は
マイクでも通したようによく通る。
それは、その声が 単に肉体のみから
発声するものでは無く、『念話』と呼ばれる、人間の脳に直接働きかける異能の
一形態であるからなのだろう。
それは現代で言えば催眠術のような効果を伴って、聞く者の精神に鷹の爪のように喰いこんでいく。

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