《MUMEI》

静かな部屋
マオミさんが、タバコに火を点けてた

……ひとつ嘘をつくと、その嘘を隠すために、また、嘘をつくのよね

煙を吐き出したマオミさんが、そう言ったんだ
そして

わかってくれるとか、
これは言えないとか、あるよ、絶対、
けど、隠し通せないなら、初めからやらないことよね
翔にしてみたら、あの男が奥さんと別れようが、転勤しようが関係ないもの
それに、ジュリにしてみたら、翔の昔の女がどうなっても、関係ないわよね?
幸せで居て欲しい思いはあっても、何も出来ないものね…

そう、話したんだ
そして、ジュリさんを、強く見て

目が、生き返ってるね
アンタ、オドオドしてるときは、必ず相手を見ないわ
小心者よね

そう、言ったんだ
そして、俺を見て

女遊びしたのは、まぁ、ヤられた女がマヌケってことで…
だから、遊ばれたジュリはマヌケな女ってことよ
その、マヌケな女を欲しがるなら、男、磨きなよ
目の前を、ジュリが歩いてたのならその場で出ていきなよ
そこで、動けなかったアンタがマヌケなのよ……違う?

…………反論、ひとつも、出来なかった

人の事は、楽ね
自分がそうなったら、わからないけど、
無責任だから言えるのよね
でも、無責任だけど、企みはないわよ、
別れてくれたら、私にもチャンスは来るかもしれないけど…ね…
あの男、親切ぶって、別れさせに来たんだと思うわ
隙を見せたジュリが、悪いわね
頼るべき相手じゃないわ、これは、浮気よね

そ、そんなことない、寝てないわよ!

触られなかったの?

断ったわ!

触られたんだって、翔、どうするの?

……寝たと思ってる

な、嘘なんか付いてない!
寝てないわ!

………あの男のテリトリーに入っていったんでしょ?
ムリヤリ来られたらヤられてるよね?
それに、俺との事を話してる時点で、もう、同じだよ…

だから、それは……
…………そうね……でも、信じて
寝てないわ、ちょっと指突っ込まれただけよ
あんなガキじゃ満足できてないだろって……ハンドバックで殴ってやったわ
私をラブホテルに連れ込もうとしたときにね……
でも、電話で謝ってきて、……
ガキに奪われたのが悔しいとか…色々言ってたわ…
……本音なのかなって…
それで、私も翔の事を話して……
相手の手のひらに乗せられてたのよね…
でも、寝てないし、
犯されてもないわ!
……だから、まだ、やり直せると思ってるの!

ジュリさん、そう、強く言ったんだ

………

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