《MUMEI》
6日前
 翌日の朝は珍しく晴れていた
差し込んでくる朝陽に目覚めを促され眼を覚ます
「おはよ。早いな」
先に起きていたらしい彼女は丁度着替え中で
自分に見られてしまったという事に瞬間赤面し、枕を投げつけてきた
「痛っ、何!?」
それを顔面で受け取る羽目になり、つい返してやれば
だが彼女は立て続けに次は毛布を被せてくる
着替え終わるまで見るな、と
今更恥ずかしがる間柄でもいないだろうにと、ばれないように肩を揺らした
仕方なく暫くそのままでいると布団が退けられた
どうやら着替えが終わったらしく自身も身支度を、とベッドを降り上着を脱ぎ始める
他人の着替えを見る事も恥ずかしいのか
彼女は短く声を上げ、量の手で顔を覆ってしまった
その間を借り手早く身支度を済ませると荷をまとめる事を始め
出発する旨を伝え彼女の手を取った
外は晴天
本当にこんなにいい天気になったのは久方振りで
感じる眩しさに手で日よけを作りながら空を見上げて見る
天気が、いいね
そう傍らで呟く彼女へわずかに笑みを浮かべて返し歩き出す
今日は何処まで行こうか
そんな事を考えながら進んでいけば
その途中、久しぶりに人とすれ違った
「おや。何処かへ行かれる途中ですかな?」
わざわざ脚を緩め声をかけてきたのは
散歩途中らしい老夫婦だった
自分たちを眺めながら、穏やかな笑みを浮かべている
「……楽しんできてね。め一杯」
それだけを短く伝えると、それ以上会話することなく老夫婦はその場を後に
その背を暫く立ち尽くしたまま見送っていると
彼女が自分の手を握り返した
「どした?」
僅かな引きに振り返ってみれば
彼女は自分へと身体を凭れさせてくる
そして腕を組むと
ずっと、あんな風に仲良く居たいね
老夫婦の後ろ姿を眺めながら告げる
ずっと、世界が終わるその時まで
僅かに寂しげな表情を浮かべた彼女のそれはそう訴えているような気がして
自分はついその身体を抱きしめてしまっていた
考えないように、しているのに
刻々と過ぎていく時間がどうしてもそれを許してはくれない
彼女の肩に顔を渦ねそのまま動かずに居ると
大丈夫。ずっと、仲良くいられるよ」
彼女の柔らかな声が耳を掠め
自分は暫くそのまま顔を上げることが出来なかった……

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