《MUMEI》

背中のシャツを摘む。


そんな動作に応えるように七生は頬を寄せてきた。

「……二郎、キスしていい……?」
熱っぽい息と共に耳元で囁く。甘い声だ。目を閉じてしまう。力が入らない、良く響く低音……。





「……いい?」
薄目で覗くと、七生は確認を取るように俺の顔を伺っていた。鼻が付きそうだ。
七生の澄んだ眼差しと均整な顔立ちが飛び込んできた。



「…………………ぇー……」
顔を突き合わせると改めて恥ずかしくなる。
でも俺には断る理由なんてない。










    「ダメ。」



乙矢の声。
目線を本から離さずに黙々と今まで読書していたようだ。
驚いて体が強張る。乙矢の部屋だったことをすっかり忘れてた。

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