《MUMEI》

…………いつまでしてんのよ

マオミさんの声がした

ゆっくり、ジュリの唇から離れると、
ジュリが、俺を見つめてて

……マオミの言ったこと、やっと理解できたわ

俺を見たまま、そう、言ったんだ

………浮気ばかりしてる彼氏なのに
マオミは、真っ直ぐ見てたもんね…

ジュリの言葉にマオミさんは、何も答えなかった
でも、ジュリの視線は、俺に向けられたまま…

……好きな人から、電話が来ても、直ぐには出ないの
………自分から告白したりしない
……愛してなんて、絶対言わない
私を見てなんて、言わない……

ジュリ、ゆっくりと、そんなことを話してた
そして

……初めての、本気の恋愛に怯えてたんだね、わたし
……翔が、怖いんじゃない、何もない、自分が怖いのね…

そう話して、マオミさんを見た、ジュリに

失恋して泣いたこと無いでしょ?

マオミさん、そう言って、泣いてたんだ

……うん

ジュリ、貴女、初めてがレイプだから、
ズット閉ざしてたんだよ
心を閉ざしてたんだよ……
身体だけじゃ、満たされないよ
心だけでも、薄れてくよ…

自分がどれだけバカだったか、わかったわ

うん……幸せになりなよね

……うん

………悔しい……なんで、ジュリなの?
…どうして、こんなに翔を好きになっちゃったのかな……

……真っ直ぐだからかな?

……私が声をかけたのに、私が、見付けたのに…
身体だけなら、私だって、翔を満たしてあげれる……
……ジュリ、主導権握ってかもしれないけど、遊ばれてたんだよ

うん、そう思えるわ

身体よ、目的は

私も似たようなもんだったから

……辛くても、自分の気持ちに嘘を付いてると、もっと辛くなるよ

うん、……………ありがとう、マオミ

別れちぇばよかったのにぃ!
何やってんだろ………わたし……

…………がんばるね、わたし

……なによ、あんなキスして…私が居るのに……濡れたんじゃないの?

凄く濡れてるわ

……奥目もなく、よく、言えるわね

キスだけで、逝きそうだったわ

なによ、それ……

……わからない、けど、自分のこの気持ちを大切にしてたいの

………ムカツク……バカ女のままでいれば、いいのに…

ありがとう、マオミ

ムカツク!………でも、私ね、ジュリも好きよ
……気が合うとか、楽しいとかだけじゃないの
一番、私を理解してくれてる、仲間なの

うん……私もだよ

………スタートよ、何も解決してないわよ

わかってる、これからよね

そうよ、足掻きなさいよね

うん

……なによ、その笑顔…
ムカツクほど、素敵よ

ありがとう、本当に、ありがとう…

ジュリさん、マオミさんのとこに行って、
マオミさんを、そっと抱きしめてたんだ

…………

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