《MUMEI》

御陵衛士の一件で瀕死の状況に陥った藤堂は変若水を飲んだ。

傷は瞬く間に回復して、新選組に復帰することとなった。

しかし、名簿上では羅刹は死んだことになり、水面下で任務に当たる。

とある日の夜。
「平助くん……体は大丈夫??苦しくない?」

心配そうに顔を覗き込む千鶴。

「うん…………。」

返事する声には力がない。

「何かあったら言ってね。」

「千鶴は寝る時間だろ?」

羅刹は昼と夜が逆転する。
夜が活動時間なのだ。

「けど……せっかく話せるんだから……。」

「人間は寝る時間。」

ぐいぐいと背中を押す。

「わかったよ。またね。平助くん。」

おやすみ、と言って立ち去る。
藤堂はため息をつくと夜空を見上げた。

「いつかこの手も灰になって………。」

右手を空にかざす。
そして何かを掴むように握りしめた。

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