《MUMEI》

男の人はケツポケットから煙草を出し、ライターで火をつけ旨そうに吹かし出した。

――さすがに年期の入った仕草で俺とは全然違う感じ…。






俺も見てたら吸いたくなりバッグから煙草を出すと、男の人は俺にライターを向けくれた。


「有難うございます」




有難たく火を貰い、
一口大きく吸い込み、吐き出す。






実はまだ吸い始めて一ヶ月にも満たない。




少しでも、モヤモヤが晴れればと始めてしまった行為…。




直哉は自分も吸うくせに俺が吸う事を何故か良く思わない…。

「なあ、名前は?」

男の人は崩した足をあぐらに直し、アルミの灰皿に灰をトンと落とした。





「坂井…裕斗です」

「え?お前が坂井裕斗…なの…?
監督に名前は聞いてはいたけど…、へー、日本人の芸名にしたんか…」



「…本名です……」




俺も同じ灰皿に灰を落とす。


「俺は日本生まれの日本人です」





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