《MUMEI》
プロローグ 〜目覚めから告白〜
〜真一 保健室にて〜
琴音をベッドに降ろし、暫く様子を見ることにした。
 しかし、琴音は昼になっても、目を覚まさなかった。俺は、給食を持って、保健室へ向かった。

ガラッ

「琴音、起きてるか?」

シーン・・・

まだ琴音は目を覚まさないみたいだ。
「ん・・・」
「!」
「あ・・・あれ?どこ・・・?」
「琴音!良かった、目、覚まして。」
「うん?真一、何でここに?てか、何で私保健室にいんの?」
おいおい・・・起きて早々質問攻めかよ。まぁ、琴音らしいっちゃ、琴音らしいか。
「ねぇねぇ、何で?私、さっき職員室にいたよね?」
「えっと、まず、そんなに興奮するな。また倒れるぞ。」
「またって・・・いつ私が倒れたって知ったの?」
「職員室で。だって、俺がここまで運んで来たんだもん。」
これ・・・言って大丈夫だったのか?琴音、めっちゃ吃驚してる・・・。まさか、変態とでも思われたか?・・・いや、琴音はそんな子じゃない!そんな子に育てた覚えは無い!
「私、重くなかった?」
「心配するなって。超軽かったから!」
いやいや、心配なのはこっちの方だよ!あの軽さは絶対に異常だろ!あと、お姫様抱っこの件は内密にお願いします。
「で、状況を説明すると、今は給食の時間で、つまり、琴音は三時間半以上寝てたっていうこと。蛇足だけど、俺は琴音の看病に付きっきりだった訳で。」
「ちょっと待って!授業はどうしたの?」
「付きっきり=受けてない、だろ?」
「何それ・・・私なんて放っとけば良かったのに・・・。何やってんのよ。」
琴音は急に悲しそうな顔をする。
「放っておけるワケないだろ!」
「え?」
「俺がどんだけ心配したと思ってる?」
ついに病人に対して怒ってしまった。でも、琴音は、自分のことを下底評価しすぎなんだ。もっと自信を持って欲しい。
「心配してくれてたんだね。ありがとう。でも・・・それは幼馴染みだからでしょ?」
「どういうことだ?」
琴音は一体何が言いたいんだ?これが分からないなんて、俺って鈍感なのかな・・・?
「真一は鈍感なんだね。でも、真一らしい。前に、公園で、私が、好きな子がいるって話、したでしょ?」
好きな子の話・・・ああ、そんな話もしたよな。誰なんだろう・・・なんて気になった記憶があるな。
「こんな所で何だけど、好きな子、誰か教えてあげる。」
「ん。教えて。」
「真一。」
「は?」
まさか・・・好きな子って・・・俺なの?聞いたことないぞ?そんな素振り、見せたことも無かったのに・・・。琴音・・・耳まで真っ赤だぞ・・・。・・・でも、琴音の気持ちには答えられない。確かに、琴音は顔もスタイルも申し分ない。素直で、頭も良い。でも、やっぱりダメだ。幼馴染み以上の関係になるのが何だか怖いような・・・不安が残る。俺たちはこの関係が丁度良いと思う・・・。
「琴音、ごめん。琴音の気持ちには答えられない。」
傷ついちゃったかな?理由を全部言うべき?
「・・・。」
「!・・・こ、琴音?もしかして・・・泣いてるの?」
「ぐすっ・・・ううん。大丈夫。真一にもいろいろ事情があるんだよね。ありがとう。話・・・聞いてくれて。これからも、幼馴染みとして、クラスメイトとしてよろしくね。」
・・・何で琴音ってこんなに大らかなのだろう。臆病だった俺があっさりと断ってしまったというのに、あんなに笑顔でいられるなんて・・・。
「うん。これからもよろしく。」

〜琴音 保健室にて〜
 「琴音の気持ちには答えられない。」
・・・へへっ、やっぱりダメだった・・・。そうだよね・・・。真一って、格好いいから、モテるだろうし、好きな人くらいいても当然だよね。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫