《MUMEI》 4日前ひどく寒い日だった 前日の雨の影響か、世界全体が冷めてきているのだと 道端で雑談する誰かが話しているのを歩きながら耳にする だが別段驚くことでもない 世界はもうすぐ終わるのだ。人が死ねば熱を失うように世界とてその熱を失うのだろうと 自分は何故か肩を揺らす どうして笑えるのだろう。こんな状況で 自嘲気味にさらに笑みを浮かべれば彼女の手が頬へと触れてきた 辛そうな顔はしないで欲しい 笑えていると思っていたのだ。自分はまだ笑うことが出来ている、と だが実際は全く笑えてなどいなかったらしい 「……今日は、寒いな」 手が悴んでしまいそうな程に冷えた空気 吐く息も白く氷り 自分は温もりを求め彼女を抱きしめる 彼女は何を言う事もなく自分がしたいようにさせてくれて 漸く寒さも和らぐと、歩くことをまた始めた あそこに、行ってみたい そう言いながら彼女が指さしたのは 少し先に見えるショッピングモール 何か買いたいものでもあるのか、と問うてみれば 彼女ははにかんだ笑みを浮かべひみつと一言 「教えてくれないのか?」 多少なり不貞腐って見せるも彼女は教えてはくれず それ以上は聞くことをやめておいた 話も程々に、このまま歩き進んでいけば今日中には着くだろうと 歩みをわずかに早めた途端 更に冷たさを増した風が二人に吹き付ける 寒そうに身を縮ませる彼女 口にこそ出さないがやはり寒いのだろうと 自分の上着を脱いで着せてやる そんな事をしたら風邪をひいてしまう、と彼女が首を横に振る 「お前よりは丈夫に出来てるつもりだけどな」 心配げな彼女を宥めてやるため態とからかう様な口調で言ってやれば 彼女は自分だって丈夫だと頬を膨らまして見せる そのまま上着を脱ごうとするそれをやんわりと手で制し いいから着てろ、と頭を掻き乱してやった まるで子供扱いだ 顔を膨らましてしまい 自分は彼女の機嫌を取るため苦労する羽目になった…… 前へ |次へ |
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