《MUMEI》

「んなことより――…。」


何故`痛覚´が働いているのか、そう問おうとした所で、魔物が接近していた事に気が付いた。


「ハル!」


咄嗟に、俺の上に被さる体位だったハルを下にし、叫んだ。

「キュイイイィィィイ!」

同じく絶叫したバトルなんとか…蛾が羽の隙間に隠し持っていた金属製の矛先が視界に入った。しかし、避ける術は無い。

が、受けるとは言っていない。

「ハル!体を出来るだけ小さく!」

再び叫び、素早く立ち上がった。即座に剣を抜き、目を凝らす。何十もの鋭い刃が、俺達目掛けて雨の如く振り注いだ。

「……ぐっ…ぅぉお!」

間近で見ると何百にも見える。それら全てを言葉通り音速で叩き落とす。気合いを入れて呻き、最後の一片を視界から消すと、直ぐ様地を蹴った。

未だモーションを立て直している蛾だが、こいつのあの時のスピードは要注意だ。ここは慎重に回り込む。

「スキル発動。コード:レッグ。」

足裏に魔力を収束。そのまま空を蹴り、壁を二度蹴り、敵の背後へ直進する。


「スキル発動。コード:アッシャー!」


言い放ち、狙いを定め撃つ様に剣を置く。狙い通りの場所へ沈んだ剣は、蛾の中心を二つに割った。


地面に足を着けると蛾は粒子に変わり、暗闇を照らした。かという俺は今頃恐怖が体を巡り、剣を持つ腕が震えだした。

「……ハハ…………。」

不意に口から漏れでた言葉を飲み込み、前を見た。

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