《MUMEI》 待って 皆がこちらに背を向け離れていく。 桜が舞う。 待って 手を伸ばす。届かない。 突如、視界を赤が覆った。 かすかに見える浅葱色。 「待って!!!」 勢いよく起き上がる。 見慣れた屯所の天井。 「夢…………?」 千鶴は目を擦る。 「どうかしたか?」 部屋の襖の外から土方の声がした。 「いえ…………。夢を見たんです。」 「夢………?」 「皆がいなくなって…………。」 「千鶴を置いて俺達がいなくなる訳がないだろう?」 土方はあり得ないと肩をくすめる。 「ありがとうございます……。」 「もうすぐ飯だ。早く支度しろよ?」 そう言って立ち去って行った。 「はいっ!!」 大きな声で返事をした。 二度とその背を見失わないように……。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |