《MUMEI》 《ミリオンヘイムオンラインを現在、十五時十八分にプレイしているプレイヤーの皆々様、初めまして。ミリオンヘイムオンライン製作委員会会長蒹株式会社オールセレクト社社長の、矢吹慶一郎です。》 その言葉を聞いて、成る程、と確信すると同時に、不安が沸き出てきた。 想像していた事実が、より濃厚になってきた為である。が、そんな思いも余所に、映像内の男――…矢吹慶一郎と名乗る人物は、言葉を続けた。 《突然で申し訳有りませんが、只今より、本当のミリオンヘイムオンラインを開始致します。といっても、本当に始まるのは今から一時間後なのですが。まぁ、その説明は今から致しましょう。》 余裕ぶって――…ではないのだろうが、かなり余裕で、淡々と迷い無く言葉を連ねる。 《まずは一つ。十五時十八分から、ゲーム内で外傷を受けた場合の`痛み´機能が発動します。戦闘をしたプレイヤーはもうお気付きでしょう。現実と全く同等の痛みが、現実と全く同じ様に、痛みを受けた本人を襲います。感覚リンク等をしていると、ヒットポイントバーの減少は勿論、痛覚もリンクします。毒状態等の状態異常も有効です。》 一言一句聞き逃しの無い様、必死に頭を回転させる。隣に座りこむハルは、もうこの映像を見た筈なのに、鼓動が早く聴こえる。 《そして更に付け足しをすると、ゲーム内で個人のアバターが外傷を受けても、現実の身体にはなんの外傷も有りません。》 尚も余裕たっぷりの矢吹慶一郎がそう言うと、俺は内心安心していた。そりゃ普通に考えれば有り得ないのだが、ゲーム内で痛みを感じている時点で、そのくらいの事平気でやりそうだ。 しかし、腑に落ちない。`まず´という事は、次がある、という事なのだ。 《そして、もう一つ。》 想像は的中し、言葉は続けられた。 《プレイヤーのヒットポイントがゲーム内で零を差した時、現実でのそのプレイヤーも死に至ります。》 唖然。 只、唖然とした。 絶望も失望も、何も無い。意味がわからない。理解出来ない。 死に至る? それはつまり、死ぬ、という事か。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |