《MUMEI》 「班長会議長くて疲れたあ…………。あれ、なんでいるの? まあいいや、連絡あるから聞いて。南にも伝えておいてね。」 東屋が入って来て咄嗟に離れる。 心拍数が乱れた。熱はまだ冷めない。 七生とは会話もなく、部屋に戻る。 歯を磨き、明日の身支度に荷物の整理をしてベッドに入る。 俺は、変わったのか。 前は水瀬は好きだったのに、もうその記憶は曖昧で七生に触れた熱ばかりが残っている。 余熱を冷まそうと洗面所で顔を洗い直した。 七生と両想いになったのか? 自分は同性愛者だったのか? 親にはなんて言えばいいのか? 顎に滴る水滴のように疑問がぱたぱたと落ちた。 どうしたらいいのかな、お前なら解る? 「七生……」 バスタブの縁に寄り掛かって座る。独り言で呼んでみた。 ガチャ 七生が入ってきた。 「呼んだ?」 「いやいやいや、独り言だから。」 目線を合わせるのが照れ臭くて、斜め後ろに視線を置くようにした。 俺の右手に一回りほど大きな手を重ねてくる。 「…………アトになっちゃったらどうしよう。」 うっすら痣になっている。 「しょうがないよ、七生が手加減出来ないのは今に始まった事じゃないし。 痛いのは嫌いだけど、七生に触られるのは嫌じゃない…………かな。」 ……恥ず。 野郎に言う台詞じゃないだろ、気持ち悪がられてしまうんじゃないか? 何も言ってこないし……。七生の顔をちら見する。 いつもより真剣な眼差し、だけど、耳が赤い。 「それは反則だって、可愛い過ぎやしないか? そうやってすぐ俺のこと煽って……」 七生の手が両手を握った。 「煽ったっていつ?何もやってないから!そっちが煽ったんじゃないか……」 目がぎらついてきた。 気持ちが高ぶったらしい。 前へ |次へ |
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