《MUMEI》
1日前
 残り、僅か1日
今日1日は彼女をつれ、当初の目的通り遊園地で遊ぶことにした
賑やかで楽しいソコに在れば、この瞬間は全て忘れられるのでは、と
二人、夢中ではしゃいだ
「次、あれ乗るか」
そう言って指さしたのは
乗る人全てが悲鳴を上げる絶叫マシン
見た途端、彼女の顔が引き攣っていく
「何?怖いか?」
見て、その様子で分かったが態と聞いてみる
だが彼女が強がりなのもよく分かっていて
こういう場合、彼女は絶対に否とは言わないのだ
普通ならここまでで本当に乗ることはしない
だが今日は彼女の手を取り、それへと乗り込んでいた
叫ばせて、泣かせて、様々な彼女を見たいと思追ったから
小刻みに震える彼女の手を握り締めてやれば
ゆっくりとレーンを上がり始める
頂点についたとき見えた景色は普段とまるで変わらなかったが
やはり違う様な気もした
急降下するさなかに、そんな事を冷静に考えていた
ああ、もう、時間がない
明日には全てを失ってしまう
抗う術は、やはり無く、ヒトというのは何処までも無力なのだと思い知らされる
そんな事、今更に分からせずともいいだろうに
よほど、この世界はヒトが嫌いなのだろうと自嘲気味に肩を揺らした
絶叫マシンを降り、暫く立ち尽くし空を見上げていると
彼女が、自分の腕を引く
次は、あれに乗る
指差した先にあったのは、可愛らしいメリーゴーラウンド
親子連ればかりで賑わうそこへ行き、二人で馬車の形のそれに乗り込む
「そんなに怖かったか?」
目尻に残っていた涙を指先で拭ってやれば
彼女は頬を膨らませ自分を見やる
本人は睨んでいるつもりだろうが、全くそうは見えない
悪かった、と謝罪をしてやり、そして
「今日は、夜通し遊んでいくか」
最後の夜なのだから、とはやはり言えなかった
せめて、楽しいままで、全てを終わらせたい
そんな事を考えてしまいながら
自分は柄にも無くはしゃぎ回ったのだった……

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