《MUMEI》 「……カケル。どうする?」 ハルは、まだ尚眉間にしわが寄っている。 恐らくは、迷っているのだろう。 戻って 、またあの日常に帰るのか。 残って、現実を夢見て闘うのか。 俺の脳内では既に答えが出ていた。 「俺は此処に残る。そして、この世界を…ミリオンヘイムオンラインをクリアしてみせる。」 迷い無く目を見て`答え´ると、ハルつ唾を喉に通した。 「ハルは、現実世界に帰れ。普通に生きるんだ。」 目を見て、はっきりと言った。 どうしても。 俺は、ハルを危険な目に遇わせたくない。 「…カケル。私も此処に残るわ。」 「どうしてっ……!」 俺は思わずカッとなり、立ち上がった。 「カケルが此処に居るから。」 俺は、あまりにも透明なその声を聞き、時が止まった様な感覚を覚えた。 「私はカケルと旅をしたい。繋がっていたい。」 「…それでも俺は、ハルを護りたいんだ……。」 正直な気持ちと共に、不思議な感情の破片が、雫となって瞳から溢れだした。 「私も、カケルを護りたい。」 決意の堅いハルが、こんなにも残ると言っている時点で答えは目に見えた。 タイムリミットは残り三十秒弱。 「…二人で生きよう。今を。」 そう呟いて、右手をハルに差し伸べた。 ハルは俺の指先にゆっくりと自身の指先を絡め、堅く握り、一気に立ち上がった。 「ええ。全力で生きましょう。」 そして俺達は、笑顔でタイムオーバーを迎えた。 前へ |次へ |
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