《MUMEI》
Case2
 もう直世界が死ぬ。そんな噂が広まっていた
自分の周りもその噂に騒動し、右往左往していた
唯一人を除いては
「……お前、相変わらずだな」
大学の、食堂
ほかの学生がその話題で騒ぎ立てる中、彼女は一人黙々と食事をしていた
自分も余り騒ぐ方ではないが、彼女はその上をいくほど冷静だった
この日も相変わらず好物のから揚げ定食を食べている
一つ、食べる?
そういって差し出されたソレを短い例一つで受け取ると
自分も彼女の向かいへと腰を下ろしていた
「怖いとか、思ったことねぇのか?」
騒ぐでもなく、慌てるでもなく唯ソコにあるばかりで
元よりあまり感情が豊かな方ではないが
ここまで徹底されているといっそ立派だと関心さえもしてしまう
つい彼女の方をまじまじと眺めてしまえば
彼女はちらり一瞥を自分へと向け
だが何を言う事もなく残りの食事を片付け席を立った
その後をつい追うてしまう
何故ついてくるのか
怪訝な顔を向けられ、だがついてくるなとは口にしない
それからは何の会話もなく、ただ歩く
暫くそのまま歩きついたソコは、図書室
人気のないそこへと入ると彼女は徐に散らかっていた本を片し始めた
突っ立ってるだけなら、手伝って
分厚い本を数冊重ねて手渡しながら自分をやはり見あげてくる
上目使いのそれに否とは言い辛く結局自分も片付ける事に
「この本、どこに片すんだ?」
やり始めてみたのはいいが結局はどの本を何処に直せばいいのかが分からず
彼女に聞く羽目に
だが彼女は答えて返してはくれず
何処に片せばいいか当ててみて
と、まるで謎掛けでも出すようなソレだ
仕方なく室内を歩き回り探しては見るが、結局は分からないままだ
僅かに苛立ちを覚え髪を掻き乱してしまえば
彼女は何を言うわけでもなく自分の手から本を取っていた
今日は、もういい。明日、また来て
その本を手近なテーブルへと置くと彼女はまた一人で作業を始める
出ていけと言われたのだろか、と身を翻し
だが彼女の言葉を思い出し、ふと足を止めた
明日、また
一体、彼女の想う処は何なのか
分かる筈もなく自分は首を傾げ、取り敢えずはその場を後にしたのだった……

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