《MUMEI》

 「お前が、今回の13番か」
某月14日
犠牲になったこの度の13番を国を挙げて弔った後
堅苦しさに早々にそこを後にし、帰路へと着こうと身を翻した丁度その時だった
突然に声を掛けられ振り返った坂下 孝人は
だが見覚えのない相手に怪訝な表情を浮かべて見せる
「……お前、誰だ?」
当然の反応を返してやれば
相手はわざとらしく深い溜息を付き
だが何を言う事もせず、唐突に坂下の腕を引いていた
「!?」
「……次は、お前だ。坂下 孝人」
何の事だとは、即座には聞けなかった
14日、死人を弔い、そして新たな死人を選ぶ日
何故、必ず誰かが死ななければならないのか
理不尽にも程がある、と感じ
理由もわからずに殺されては堪らない、と
坂下は身を翻し、逃げるため土を蹴った
だがそれを相手は見逃してはくれず
手首が折れてしまいそうな程強く掴まれる
感じる痛みに手を放すよう言って向けようとした次の瞬間
「――!?」
首に、鈍い衝撃を感じる
呼吸が止まり意識が薄れ、完全にその身体が崩れ落ちた
それを相手は受け止めると、軽々横抱きにし
坂下の顔を確認するかの様に覗き込む
「……あと、一か月。。せめてお前が自ら穏やかな死を望む事が出来る様になるまで」
傍に居てやる
まるで愛おしい誰かに言ってやるかの様に穏やかに
相手は坂下の耳元へと囁いて居たのだった……

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