《MUMEI》

頭のうえの一之瀬君の手のひらを握る






「一之瀬君はなにかないの?悩みとか」





無表情になってしまった









でも 大丈夫だ









一之瀬君だから







「かあさんは相変わらずかな。今日の夕飯、食べてくれてると思う?」





にこりと笑う一之瀬君は さびしそうで






「絶対!食べてくれてるよ」







こんなことしか言えない なんて





私はなんて無力なんだろう







「ありがとう、槙村」







そう言って、一之瀬君は話をそらした








私はそれをわかっていて 聞けなかった





そのまま中身の無い話をずいぶんとしてから 帰った








槙村の表札をみつけて また 泣いた

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