《MUMEI》
エピソード1.幽霊屋敷
登校中、独りとぼとぼと道を歩いていると、突然背後から頭を強くはたかれた。
キャッ!と叫び、思わず上体を屈めた
摩起−まき−の視界に、勢いよく前方へ走り去る少女達のふくらはぎが映る。
「ノロマちゃーん!とろとろカタツムリみたいに歩いてっと、幽霊屋敷の魔女にとっ捕まるよー!」
クスクス小馬鹿にしながら学校方向に走り去るのは、クラスメイトの梨々香−りりか−、芽衣−めい−、匡子−きょうこ−達だった。
椅子の上や上履きに画鋲を入れたり、体操着を隠したり、トイレの個室に入っていると上からホースの水をかけたりする、
とてもフレンドリーなクラスメイトだ。
あまりにもフレンドリーなので、馬鹿教師も、おうい、お前らあまりやりすぎんなよ、と、たまに笑いながら注意する。
(朝っぱらから本当に嫌な奴ら・・・)
摩起は心の中で舌を出した。
最近ますます風当たりが強くなり、毎日が試練な感じだが、何と言っても学区内から微妙に外れているために、人通りも異常に少ない・・・・五百メートルあまりの、この薄暗い雑木林の道を通り抜ける登校中のひとときは、一日の始まりの最初の試練と言えた。
つい最近もこの近くの雑木林の中で、サラリーマンの首吊り死体が見つかったばかりだし、過去には殺された幼児の死体まで見つかっているとゆう場所だけあって、昼間でさえ、ここらへんは不気味で陰鬱な空気に包まれている。
問題の『魔女が棲む』と噂される幽霊屋敷とは、この五百メートルあまりの雑木林の道を通るさい、中間付近で林越しに
見え隠れする 、廃屋の洋館の事だった


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