《MUMEI》
新たなる生活−1
〜琴音 教室にて〜
 「今日から中学生かぁ・・・。自覚なんて無いなぁ・・・。」

なんとなく一人言のように呟く。はっきり言って、まだ、中学生になった、という自覚はあまり・・・というか、全く無い。
唯一の実感と言えば、制服を着て、電車に乗って学校に来ていること、校門の看板に、“中学校”と書いてあったことくらいかな。
誰でもいいから、話し掛けてみよう、と何回も、何回も思うものの、なかなか勇気が出ない。
中学生になっても、人見知りは一向に直る気配が見られなかった。だから、しばらくの間、誰とも話をしなかったっていうか、出来なかった。
 入学して、三週間が過ぎようとしていた頃、授業を学年全員で視聴覚室にて行うことになっていたので、みんな揃って移動することになった。
一人の方が確実に落ち着くのだが、今回は仕方あるまい、と思い、あまり気が乗らない心と、重たい足を引き摺って歩いた。

〜琴音 視聴覚室にて〜
 視聴覚室に着いたとき、入り口で、誰かに話し掛けられた。

「ねぇ、今日のお昼、一緒に食べない?」

えっと、この子は、中村さん・・・だったっけな?・・・一瞬戸惑った。本当に友達を作る自信が無かったからだ。
また虐められてしまう、そうネガティブに考えていたから。でも、

「もちろん。」

と、答えてしまった。自信なんて無いのに、親友、と呼べる存在になれるのかも分からないのに。

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