《MUMEI》

―――――――――――

 『キモ梓!』

  『うわ、あの子でしょ、亥角君に逆らった子!』

『可哀そ…あんな子放っとけば梓ちゃん虐められることなかったのにね』

 『亥角も亥角だと思うけど…突っ込んじゃった梓も馬鹿だよね』


『死ね!ウザ梓!』

ドカッ

『痛っ』

『死ね!死ね!』

『私なんか悪いことした!?ねぇ!なんで!?何で!?』

『五月蝿いんだよ!虫!」

バキッ

『やめて!やめてよ!!』


―――――――――――




ハッとして、目を開けると見えるのは白いタイルの天井。

「起きたか。ここ、病院だから」

そこに覗きこんでくる、私を助けてくれた青年。

起き上がろうとすると、肩を軽く押されて、再びベッドに倒される。

「まだ寝とけ」

…さっきのは、私の幼いころの夢。

こんな時に見るなんて、憂鬱。
忘れたつもりだったのに、あの夢のせいでみんな思い出してしまった。

「…お前名前は」

突然、名を聞いてくる青年。

「え」

「いいから」

「…上原梓」

「カンバル…覚えやすいな」

彼は少しだけ口角を上げて微笑んだ。
この人の笑った顔、初めて見た。

「あの…あなたは」

「俺…は、黒澤黎司。」

「レイジ…さん」

「呼び捨てでいい」

「レイジ」

黎司はそっぽを向いてしまった。
少し、可愛いところあるじゃないか。



――――――私は、また新しいヒトと出会ったんだ。


「黎司、チームに入ってよ」

「あ?」

「チームWATERーWHITE。私と私の友人が作ったチームなんだけど」

「断r「もう登録しといたよ」

「お前…。何時の間に俺の端末盗った…。」

黎司の端末のチームの項目にはちゃっかり“WATER-WHITE”と載っている。
はい、と、端末を黎司に渡す。

黎司はしばらく冷や汗をかきながらその画面を見つめていた。

今頃私はどんな表情をしているだろうか。

きっと、ものすごく輝いた笑顔だろう。自分で言うのもなんだけどね。



―――――恭介、どうしてるかな。



あの時逃げて行って、何処に行ってしまったんだろう。

まだ、そこら辺うろついているといいけど。

私の事、心配してくれてるかもしれない。



――――――はやく、恭介に会いたいな―――




――――――――――――――――――――――――――――――――


「…ここから出せ」

「駄目。死にそうだったキミを助けてあげたんだから、我慢しなさ―い」

「はぁ?」

「強気だねー。そういうトコロ、おねーさん好きかもー」

「うるさい」

「あはは!おこられちゃった」




―――――梓は、恭介がこんなことになっているなんて、想像すらできないだろう。

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