《MUMEI》

フッ・・・・。
馬鹿ばかしい。ナ・ン・セ・ン・ス。
幽霊だの魔女だの、この21世紀に存在する訳がありませんわ、
ほーほほほ。
授業前の安らぎのひと時、トイレの個室で思いを巡らしていると、天から大量の水が降ってきた。
「はーい!便器と一緒に摩起ちゃんも
綺麗に洗ってあげるわよ。
私達ってやさしいでしょー?」
トイレに入る前に誰にも見られていないのを確かめたのに!!
一体なぜ、私がここにいる事がわかったのか?!
声は梨々香だった。
笑いながら走り去る三人組の足音。
確かに魔女はいるかも知れない。
ただし、幽霊屋敷じゃなくてこの学校にだ。
全身から水を滴−したた−らせながら、教室のドアをくぐる。
まだ担任が来る前の教室内は賑やかにざわめいていたが、ずぶ濡れの摩起が入って来ても、誰ひとり声をかけてくる者は
いなかった。
まるで摩起が存在していないかのように、クラスメイトのひとりが目の前すれすれを走り抜けていく。
それを避けようとして危うく後方に倒れかけ、慌てて誰かの机に手をつく。
「ごめんなさ・・・・」
その声はすぐに小さく消えていった。
その机に座る生徒もまったく摩起の存在に気付いていないように、笑いながら
隣の生徒と喋っていたからだ。
自分の机を見ると、いつものように花瓶に生けられた菊の花が置かれていた。

そして・・・・ここに幽霊が独りいましたとさ・・・・摩起の喉奥からヒステリックな笑いが込み上げてきた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫