《MUMEI》
6日前
 今日、片付ける分はこれだけ
翌日、突然に彼女にメールで呼び出された
何事かと向かってみれば矢先に、本を数冊手渡される
「……お前な。行き成り呼び出しといてコレか」
反射的に受け取ってしまいながらも愚痴る事をしてやれば
手伝ってくれる、約束
上目で見上げられ、それ以上愚痴ることが出来なくなってしまった
苦笑に肩を揺らし、彼女の指示の元片付け始める
あちらこちらに指示が飛び、自分ばかりが右往左往する羽目に
だか途中でその指示がピタリと止まる
どうしたのかを問おうとしたその時
彼女は一冊の本をまじまじと眺め見ていた
「何やってんだ?」
片付けはしないのか、顔を態々覗き込んでやれば
読んでくれと差し出される
自分が読むのかと若干怪訝な表情で返してしまっていた
「……分かった。読めばいいんだろ。読めば」
結局、根負けしたのは自分
手近な椅子へと腰を降ろし、彼女を膝の上へ
そして受け取った本の頁を捲る
(それは、世界と恋をした少女の物語
心優しい少女は段々と冷たくなっていく世界を抱きしめながら
どうしてこんなに傷だらけになってしまっているの、そう声をかけた
世界は、何も、答えない
人の言葉など知らなかった世界には答えて返す事が出来なかったのだ
唯、痛みばかりが鮮明で
寒さと痛みに耐えるかの様に世界は自身を抱きしめる
身体が軋む音を立てるほどに強く
駄目。壊れてしまう
自分が抱いていてあげるからと、少女は世界の腕を解いてやっていた)
物語の最中、膝の上の彼女がどうしたのかゆらゆらと揺れ始める
どうやら眠くなってしまったのか、船を漕ぎ始めていた
眠たいのかを問うてやれば、彼女は何を無理するのか首を横へ
眠くなんてなってないから続きを読め
袖を引き、強請ってくる
まるで子供の様なソレに自分は肩を揺らしながら続きを読み始めれば
すぐに聞こえてくる寝息
「……俺も、少し寝るか」
彼女の重みを心地よく感じながら
自分も少し休んでやろうと本を閉じ、寝に入ったのだった……

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