《MUMEI》
籠の中
―恭介サイド―


今、俺は倉庫の中の鳥籠の中にいる。

なんでこんなところにいるかって?

自分で望んでいるわけじゃないよ、モチロン。

それは、俺が高台で眠ってしまった時だ―――――――





「おーい。きみきみ。起きてよ―」

腕に何かツンツンと当たる。指?

ゆっくりと思い瞼を開けて、凍りついた雫を頬から落とすと、目の前にいる彼女に気がついた。

「こんなところで寝てると―、そのままお星様になっちゃうよー?」

そう言って、俺の腕を掴んで引っ張り上げて起こすと、顔をぐいっと近づけてくる。それに合わせて、俺は後ろにイナバウアー。

「きみー、ランクSSのスキル持ちの木佐森きょーすけ君だねー?」

「そ…そうですけど…なんですか」

彼女は歯を出してニッと笑うと、

「私はミーシャ・アレクサンドロフっていうのよ♪ロシアからきたの」

「…はい、そうなんですか…」

彼女はどんどん顔を近づけてくるから、俺は荒川さんと同じくらいの角度のイナバウアーに。

「おねーさんね、今、チームつくったんだけど…」

「え…えーと…」

「君、入ってくれない?」

「自分、もうチームに入ってるんで…」

「えー?そーなのぉ?じゃーあー」

ミーシャの右腕が、俺の首の背後に回ると――――

「こーしちゃえっ」

―――――俺が後ろを振り返ろうとしたときは、俺の意識は飛んでいた。





で、目が覚めたら、暗い倉庫の中、鳥かごに閉じ込められていた、というワケだ。

その倉庫には、ミーシャ以外にも三人、木箱の上に座って、何かを話していた。

この人たちが、彼女の作ったチームのメンバーなのか?



そんなことより―――――――ここからどうやって脱出するか、だ。


鳥籠のカギは、ミーシャが持っているため、そう簡単に出られるとは思えない。
せめて、何処かにかけていたり置いてあったりすればいいのにさ…

ミーシャは、俺がチームに入るというまで、ここに監禁すると言っていた。

籠の扉が空く時…というと飯の時かトイレかな。

その時に脱出しよう。
俺の能力を使えば、この倉庫を逃げ回ること自体は簡単なはずだから。


トタンの汚い壁の方を向いて、“考える人”のポーズをし、考える。



あぁ…暇だなー…。



―――――――そうだ、梓は?


梓はまだあの吹雪の中で戦っているのだろうか。

それとも、奴を倒して俺を探している…とか?

…死んでないことを、ひたすら祈ろう。

だって、ここでできた初めての友人なんだから。


まあ、簡単に死ぬことはないだろうな。あんなに強いし。

…俺と違ってな。



そんなことを考える俺の背中に、ジトジトした視線が、纏わりついた。

                                                            

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