《MUMEI》
人体実験の続き(3)
羽根のある少年の続き(3)兄貴視点。


…やはりヒロに預けたのは失敗だった。優しいヒロの事だから、ガキに同情してしまうだろうと解っていたのに…。

俺は、闇市のブローカーをしている。だが、今までヤバイ取引には手を出していなかった。そんな俺が、このガキの取引を引き受けたのは、法外な報酬が貰えるからだ。

その金で、ヒロと南の島にでも高飛びし、ひっそりと暮らそうか、なんて夢みたいな事を考えていたんだが…。

俺は、ヒロに負い目がある。俺みたいな、チンケなチンピラが拾わなかったら、こいつはまともな人生を歩んでいたに違いなかった。

どっかの街で、平和で平凡に生きていただろうと思う。俺なんかと関わらなければ…。

それなのに、ヒロは俺の事を好きだ。と言う。でも多分、それはアレだ、疑似恋愛だ。本物じゃない、愛情に飢えた奴が目の前の優しくしてくれた奴にすがる感情だ。

解っていて、俺はそのヒロの気持ちを利用し、何食わぬ顔して、ヒロを抱いた。最低だな、俺は。

もっと早くヒロを手離すべきだった。チャンスなんて何度もあったのに、出来なかった。

何故ならば…俺はヒロを愛してしまっていたから…。もう、自分ではどうしょうもない位に…。



『おい、起きろ。』

眠るヒロを起こさぬ様に、ガキを起こす。

兎に角、このガキを何処か別の場所へ移そう。

そう決めた俺は、ガキの手を引いて、ドアへと向かう。


「パタパタ…パタ、バタバタッ…バサバサバサ…」

今まで、無抵抗だったガキが、羽根を激しく動かし抵抗する。

『くっ、ガキ。大人しくしろっ』

小声で、怒鳴れば……


「ぁ…ヒ、ヒ……ロ、ロ…ヒ、ロ、ヒロ、ヒ…ロ…」


『ガキ…お前…』

喋れないはずのガキが、ヒロの名前を叫ぶ。



「兄貴?何をして…」

ヤバイ、ヒロが目を覚ました。


緩んだ手を振り切り、ガキがヒロの元へ走る。


「ヒロ、ヒロヒロ…イッショ、ヒロ…」

旨く回らぬ舌で、ガキが一生懸命喚く。

「…っ、お前喋って…」

ヒロがベッドから跳ね起き、ガキを抱く。


…あぁ、ジ、エンド!
こうなれば俺の敗けだ。


深い溜め息を吐き、二人を残し俺は部屋を後にした。




*****

ポチコメいただき、とても嬉しかったです。

甚だ、自己満足の話ですが、お付き合い感謝します。

まだ終わらない…困った。


駄文失礼しました。

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