《MUMEI》
人体実験の続き(5)
背中に羽根のある少年の続き(5)ヨク視点。


さっきの話。
ジンは二人を助ける為に死ぬ覚悟だ。と言った。

闇市から逃れるには、完全に足跡を消すしか方法がない。だが、そんな事は不可能\に近い。生きている限り、何処までも追ってくるだろう。

ならば、対象者が死ねば闇市は追う術はない。奴らの目の前で、派手に死んで見せれば、諦めるしかないのだ。

ジンの考えはこうだ。
羽根とヒロの細胞から、ダミーを造る。といっても精巧な物でなく、肉芽を培養液でブヨブヨに太らせた人間擬きで良い。

そして羽根取引の当日、人間擬きを取引場所へ車で運び、車ごと爆破炎上させる。

爆破の後、飛び散った肉片を調べても二人の細胞が検出されるから、人間擬きとバレる心配はない、と言う訳だ。


「車を運転する者がいる」

『それは、俺がやる。当たり前だろ?取引の当事者なんだから…』

何でも無いように、ジンは答える。


「死ぬつもりなんだな?」


『あぁ、どっちにしても羽根取引にヘマした奴は生きていられないだろう?それに、もう…』

言いかけて寂しげに笑う。


…それ程に愛していたのか?ヒロの事を、生きる気力を失う程に…。


「俺は、二人の人間擬きを造れば良いんだな?」

『あぁ、お前はラボへの出入りを許可されているだろ?ムリなら断ってもいいぞ。』

「いや…難しい話じゃない。実験と偽れば何も不自然じゃないさ。隠れて二人の肉芽を造るのは容易い。太らせるのは、この部屋でも出来るからな。」

『…そうか。頼むな、ヨク。』


話をしながら俺は、ジンの前にウィスキーの注がれたグラスを置く。


「計画の成功を祈って、まずは乾杯だ!」

ジンのグラスをカチンと叩いて、ウィスキーを飲み干す。

『ん?あぁ、乾杯。』

ジンも同じように飲み干した。

数分後…ジンの身体は崩れ落ち、深い眠りに就いた。


*****

ジンの飲んだウィスキーには、強力な睡眠剤を入れていた。

…馬鹿だね、ジン。俺にそんな計画なんて聞かせるから…

俺が、お前をみすみす死なせるとでも思っていたのか?

眠るジンをベッドへと運び、唇へと触れるだけのキスを落とす。


「好きだよ、ジン」


安心して眠ってろよ。目覚めた時には、総て終わっているから…。


睡眠剤の効き目が切れるまで、あと3日。


*****

コンコン。
部屋をノックする音がした。


『あ、兄貴?』

慌てて、ドアを開ける。
だが、そこには見知らぬ黒マントの男が立っていた。

「お前がヒロか?俺はヨク。ジンの使いで来た。羽根は何処だ?」


そう言って部屋へと入って来た。



*****

駄文失礼しました。

ポチやコメ、本当にありがとうございましたm(__)m

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