《MUMEI》
あたしたちの出会い
「あぁっっつうう・・・」

あたしは汗を拭くと、屋上のベンチに座った。

夏休みが終わり、ちょうど一週間が過ぎた。今は昼休み。

独りさみしくお弁当を食べてる。

「ああ・・・味気ない・・・」

独りごとをつぶやいて、卵焼きにフォークをぐさっとさした。



あたしは、皆原 まつり。高校1年生。

春に、中学の頃仲が良かった友達は、クラスがはなれた瞬間、あたしに会いにこなくなった。

だから休み時間本を読む習慣をつけたら、まわりから「暗い子」というイメージをもたれた。

去年はけっこう、クラスの中心だったのに・・・。



ふうっとため息をついて卵焼きを口に放り込む。

「・・・だんだん上手くなってきたな。」

少しきげんがなおった。

アタシは、中3の始め頃から、自分でお弁当を作ってる。

お父さんもお母さんも、あたしが中3の時、事故で亡くなった。

親戚の人たちは、あたしが当時受験生で大変ということから、ひきとってくれる人はいなかった。

そのため、一人暮らしをすることになった。バイトしながら勉強もして、両親が残してくれた貯金で、学費をやしなっていた。

お金のことも考えて、あたしは将来、大学には行かないときめてる。

その時だった。いきなり風がビュウッと吹いて、お弁当を包んでいたナプキンが、飛んで行ってしまった。

「ああっ!!」

あたしは急いでナプキンを取りに行く。

屋上の柵にあたって、ひっかかってる。良かった、屋上から出なくて・・・。

柵にひっかかったナプキンを取って胸をなでおろし、ふと屋上の柵の向こうをのぞいた。

対校舎の窓を見ると、女の子のグループが、楽しそうにみんなでお弁当を食べていた。

いいな・・・きっとお母さんの手作り弁当なんだろうな。それを友達とたべられるなんて。

よく見ると、グループの中に、中学の頃仲の良かった友美がいた。友美は笑ってる。

死ぬほどうらやましかった。

その時、

「何やってんだよアホ!!!」

と、首根っこをつかまれてどてん!と後ろに転んだ。

「な、何すんのよ!!」

キレて後ろを見ると、金髪の男の子が、すごい怖い顔してあたしをにらんでた。

「それはこっちのセリフだ!何自殺なんてしようとしてんだよ!」

「・・・・・・は?」

自殺・・?



続く

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫