《MUMEI》
4日前
 室内に居ても大分息が白んできた
世界の温度低下。それが随分進んできている
寒く、なってきたね
手が悴んでしまったのか白く凍る息を手に吹き掛けている彼女
何か暖を取るものはないか
周囲を見回して見れば部屋の隅
掃除道具を収めているロッカーだろうか、それを見つけ
その中に真新しい軍手の束を見つけた
これでも無いよりはマシだろうと、彼女のに嵌めてやる
「……不格好だけど、ないよりマシだろ」
行き成りのそれに驚いた様な表情を見せる彼女
だが手を覆う僅かな温もりに、笑みを浮かべてくれていた
寒さも僅かだが和らいだ処で、本の続きをと強請ってくる彼女を膝の上
そして、続きを読み始める
(世界は暫く困った風に笑った後、少女にこう言った
『自分が傷つくのは必要な事なのだ』と
けれど少女は納得はしない
どう言い聞かせればいいのか困ってしまった世界は少女の身体抱きしめ
すっかり冷えてしまったね、と僅かに声を震わせる
それは自分のせいだと申し訳なさそうに呟く世界へ
少女はゆるゆると首を横へと振って見せながら
それはあなたがちゃんと生きているからそう感じるのだ、と
世界を抱き返し、同時に寒さも抱きしめてやっていた)
物語の半ばまで読み進めたころ
世界の気温が下がったのか彼女が身を震わせる
見るからに寒そうな様に、自分は着ていた上着の前を開き
その中へ彼女を包み込んでやるように入れてやっていた
「本っ当、寒くなったな」
けれど、冷たくはない
自分にとっての温もりが傍にあることが、冷たさだけは忘れさせてくれた
でも、二人でくっついていたら暖かいよ
彼女も同じように感じてくれていたらしく
細く、縋るには少しばかり弱々しいその腕が
それでも強く自分を抱いていてくれていた
せめて、その時まで実感させてくれなければいいものを
悲観することをやめようと、昨日考えたばかりだというのに
嫌でも、実感させられてしまう
自分がもし、物語の中の(世界)で
自分一人が傷付く事で世界全てが救えるのならば
いくらでも、たった一人で背負うのにと、そんな叶いもしない事を思ってしまいながら
何をする事も出来ない自分を、唯々もどかしく思うばかりだった……

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