《MUMEI》

窓を開けて、ベットの中から、夜風にあたっていた。

もう消灯時間だが、どうも眠れなくて。

黎司は、私が寝ているベットの下の方の、少し空いたスペースに顔をうずめ、パイプ椅子に座ったまま、寝息を立てていた。


風に揺れるカーテン越しに浮かぶ白く丸いシルエット。

兎の向きは逆だった。


静かで――――今日一番、落ち着ける時間だった。



そんなときに。

机の上に置かれた端末が、ぶるぶると震えながら移動している。

なんだー?と思い、湿布だらけの腕をギリギリまでのばして、指先で引っ掛けて端末を引き寄せた。

画面に映し出される文字は、『恭介』だった。


急いでタップして電話に出ると、恭介は何故かヒソヒソ声で喋りかけてきた。

『なぁ、梓?』

「そうだけど…」

『遅い時間ごめん。今俺、監禁されてんだけど』

「ええッ!?」

部屋に響き渡る、梓の声。

その声にびくっとしながら起きる黎司。

「…何事だ」

目をこすりながら、端末を持つ梓を上目遣いで見ながらつぶやく。

「ご…ごめん、起しちゃったか」

そういうと、手でストップ!と合図すると、再び電話に戻った。

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