《MUMEI》 摩起は頬に感じる、潮の香りのする風の 感覚にうっとりと目を閉じた。 足下には黄金色に光る水で作られた山や谷間が、絶えず形を変えて動きつつ、後方ヘ流れ去っていく。 摩起が周囲をまとわりつくように飛び交う、カモメの群れに笑顔を投げかけると、彼らはいつものごとく、 にゃあにゃあと好意に満ちた鳴き声で答えてくれた。 その中の一匹が摩起の耳のすぐそばをかすめるように飛びすぎる。 一瞬摩起は、頬にやわらかな羽毛が触れるのを確かに感じた。 摩起を追い越したカモメは前方でゆらゆら漂うように飛行しながら、後方の摩起にニヤリと笑いかける。 『にゃあ。俺に追いつけるもんなら追いついてみな。にゃあにゃあ』 その少し生意気なカモメ・・・・ジョナサン・リヴィングストンの挑発に、いつもの事ながら摩起の闘志がゴゴゴゴゴと燃え上がる。 摩起は跨−また−がっているホウキの上で上体を伏せると、 「負ぁぁけないわぁよぉーー!!」 雄叫びを上げながら、一気にホウキを 加速させた。 前へ |次へ |
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