《MUMEI》

「昨日寝る前に聴いてたのって、俺が朗読で賞入ったやつだろ?」


「勝手に聴いてたのかよ!」
コンクールで上位成績者の朗読はCD販売されていて、七生の朗読の所だけを編集して眠れないときに聴いていた。



「俺の事やたら気がつくし、仕種がさ………………………………………………………最近、せくしー……」




「せくっ……?!」
初めて言われたよ、そんなこと!
カーッと熱くなる。爪一枚一枚を指で象られた。

「さ、触りすぎなんですけど……。」


「嫌じゃないだろ?……気持ちイイんじゃない?」


「……やばいからその声でこの距離は……」
真面目に話しているのに!
どこかのツボに嵌まったようで、くっくっと笑い出す。肩に顎を乗せてきた。
七生のニオイがする。



「キスしていー?」
そういうことを冗談で自然に聞けてしまうのは彼の生まれ持った素直さのせいだろう。吹き抜ける息がこそばゆい。




「ん……」
喘ぎなのか、“うん”なのか……答えは互いの視線が合えば溢れてゆくものだ。

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