《MUMEI》 1日前失ってしまった意識を漸く取り戻したのは翌日 構内に常設してある医務室のベッドの上だった 身を起そうとした途端に感じる痛みに昨日の事を思い出す 彼女はどうしているだろうかとあたりを見回して見ればベッドのすぐ脇 腕を枕に突っ伏して眠っている彼女の姿があった 「……怪我しなくて、本当良かった」 肩を揺らし髪を梳いてやれば、同時に彼女の目が覚める 自分が目覚めている事に安堵したのか、その眼には大量のな身だが溜まり そしてすぐに、頬を伝い落ちていった 怖かった、不安だったのだと 「……本当、悪かった」 兎に角、彼女が落ち着いてくれるまで何度も謝ってやり 漸く落ち着いてくれた処で托しようと自分は身を起こした 大丈夫なのかと不安気な彼女の手を取り、揃って大学を後に 「……お前、ずっと付いててくれたのか?」 返らなければ親も心配しただろうに、と言ってやれば 彼女は未だ目尻に涙を溜めながら小刻みに頷く 自分は苦笑に肩を揺らし、家まで送っていくからと手を引けば 彼女はどうしてか、子供のように嫌々を始めた どうしたのか顔を覗き込んでやれば、持ってきてしまったらしいあの本を差し出してきた 続きを読んでほしいと頼まれてしまえば否とは言えず 本を受け取ると歩きながら読み始める (少女の腕は暖かかった 初めて感じる人の温もりに世界は安堵し、肩を撫で下ろす 人はまだ、自分を見捨ててはいなかった、と) 恐らく、この(世界)は嬉しかったのだろう 少女という存在が傍らにあった事が 恐らく今の自分もこの(世界)と同じ気持ちなのだろうと 彼女の方をちらり横目見た どうかしたのか、と顔を覗き込んでくる彼女 だが自分は何を返す事もせず これからどうするかという話題を振る事で話をそらしていた 家に帰るかと提案してみたが彼女は首を横へ そして徐に手を取ったかと思えば自分の手を引き走り出す 何処へ行くのかを問うてやれば、彼女は答える事無く歩き進め そして 「図書館?」 到着した底は、近所に建つ県立の図書館だった 最後を迎えるなら此処がいい 付き合ってくれるか、との彼女のソレに 今の自分に否を唱える理由も特にない 笑みを浮かべる事で諾を返し、二人揃って中へと入っていたのだった…… 前へ |次へ |
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