《MUMEI》 その人形の様な顔に暫し見とれていると、小さな疑問が浮かんだ。 「兄妹なのに、名字違うんだ。」 真綾さんは答えたくなさそう。が、矢吹は嬉しそうに口を開いた。 「あぁ、そうだ。私が結婚しているからな。」 「え?……ふぅん。そうなんだ。」 正直、少し意外だった。なんとなく、結婚したら女性が男性の名字になる印象が強かったから。 でも、矢吹はお見合いとか有りそうだし、黙ってみた。 そしたら二人共目を合わせなくなるから、なんかあったのか、と珍しく空気を読んだ。 「と、そんな事はいいから、沙弥嬢。ここに座ってくれ。質問には準備をしながら答えよう。」 そう言うと、矢吹はゲーム機本体へ素早く歩き、何やら操作をし始めた。 カタカタ、という操作音だけが響く空気に耐えきれず、用意された椅子に座った。 「では、沙弥嬢。そのパソコンから繋がっているコードを、中指にはめてくれ。両手だ。それと、柊。」 「は、はい。」 「もういい。出ていってくれ。」 矢吹に声を掛けられ少し表情が柔らかくなったが、それもすぐに消えた。 俯き気味な真綾さんは、エレベーターのボタンを押した。 すると、移動していた階が近かったのか、間もなく到着した。 ピンポーン 「…失礼します。」 小さく会釈をしてから、誰も居ないエレベーターに入っていった。 前へ |次へ |
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